★ユーラシアの逆転と日韓米軍の撤退 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
★ユーラシアの逆転と日韓米軍の撤退
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この記事は「中露主導の朝鮮半島和平への道筋をつけるロシア」(田中宇プラス)の続きです。
https://tanakanews.com/220827korea.php
ロシアは今年2月のウクライナ開戦後、中国やインド、イラン、
トルコなど非米諸国を誘い、ユーラシア大陸の非米化を進めて
いる。ロシアはまず、欧州に売れなくなった石油ガスなどの
資源類を非米諸国に安く売ることで、非米諸国が米国主導の
対露制裁に乗らないようにした。開戦後、資源類の国際価格
が上がったので、安く売ってもロシアは前より儲かっている。
非米諸国間の資源類の貿易決済には、米国側のSWIFTでなく、
ロシアや中国が開発してきたSWIFT代替の非米諸国通貨建て
の決済システムを使い(露SPFS、中CIPS)、中国も非米諸
国との貿易に非米決済システムを使う傾向を強めている。
中国は習近平が政権についた2014年から、ユーラシアの経済
覇権戦略として一帯一路を進めてきた。これまで一帯一路は
停滞していた部分もあるが、ウクライナ戦争でロシアが中国
も誘って非米化に積極的になったことで一帯一路も加速され
https://tanakanews.com/220728russia.php
資源の非米側が金融の米国側に勝つ
米国の監視下にあるSWIFTやドル建て決済を使った貿易など
経済行為はすべて米国側に知られてしまうが、非米決済シス
テムを使った貿易・経済行為は米国側に知られずに進められ
る。米国側は、露中主導のユーラシアの非米化の状況を把握
できなくなっている。米国側のマスコミは中露敵視のプロパ
ガンダ機関なので、中露の非米化策を悪しざまに失策として
描きたがることもあり、非米化や多極化は米国側の人々が気
づかないうちに隠然と進んでいく。国連では、加盟国の3分
の1しか対露制裁を支持しなくなった。
https://thesaker.is/geopolitical-tectonic-plates-shifting-
six-months-on/
Escobar: Geopolitical Tectonic Plates Shifting, Six Months On...
https://www.rt.com/russia/561627-un-ukraine-resolution-support/
Only one in three UN members back new anti-Russia resolution
もし今後、一帯一路など中露によるユーラシアの非米化策が大幅
に停滞して決定的に失敗したとしても、それによってユーラシア
の経済覇権が米国側に戻ることはない。米国側は1997-8年のアジ
ア通貨危機後の四半世紀にわたり、中東以外のユーラシアの多く
の地域で経済覇権をほとんど放棄してきた。冷戦終結後しばらくは、
米国側(欧米)がユーラシア内陸部を発展させる構想(日本も90年
代前半に環日本海経済圏構想など)があり、米国側がユーラシアの
経済覇権を握ろうとしていたが、それらの動きはアジア通貨危機後
に下火になった(環日本海は、日本が米国に言われて進めた構想
だったことになる)。
https://tanakanews.com/190708eurasia.htm
ユーラシアの非米化
https://original.antiwar.com/Jim_Fitzgerald/2022/08/16/ame
rican-hegemony-and-the-politics-of-provocation/
American Hegemony and the Politics of Provocation
アジア通貨危機から3年後の2001年には911テロ事件が起こり、
米国は、アルカイダなどイスラム主義のテロリストをこっそり育
ててユーラシア各地でテロをやらせ、それを口実で米軍がアフガ
ニスタンやイラクなどを占領する自作自演の「テロ戦争」の軍事
覇権戦略をやり出した。米国側の覇権戦略は軍事面が席巻し、経
済面はないがしろにされた。米国側はそれ以来ずっと、ユーラシ
ア内陸部の経済発展にほとんど貢献していない。米国側は、
テロリストを育ててユーラシアの安定と発展を壊すだけの勢力
になった。
https://tanakanews.com/f0818terror.htm
アルカイダは諜報機関の作りもの
https://tanakanews.com/120314putin.php
多極化の申し子プーチン
米国に代わってユーラシアの安定と発展を手がけるようになった
のは中露だった。911事件の前年の2000年初にロシアの政権を
握ったプーチンは、中国との国境紛争をすべて解決して中国との
結束を強化した。中露は、両国の間にある中央アジア5か国も入
れて、ユーラシアの安定と発展を推進する「上海協力機構」を
作った。上海機構は、テロリストを育ててユーラシアを不安定
化しようとする米国に対する防御策であると同時に、ユーラシア
を安定・発展させるための中露協働の覇権組織でもあった。911後、
米国はアフガニスタンを占領し、中央アジアや新疆ウイグルにテロ
行為を輸出しようとしたが、上海機構がテロ拡大を食い止めた
(中国共産党がウイグル人のイスラム主義者たちを収容所に入れ
たのは、中国にテロを輸出しようとした米国の国際犯罪への対策
ということになる)。
https://tanakanews.com/200122putin.php
プーチンの新世界秩序
https://tanakanews.com/110621SCO.php
立ち上がる上海協力機構
上海機構はその後、印度パキスタンやイラン(今年)が加盟国に
なり、トルコやサウジアラビア、アルメニア、アフガニスタン、
ベラルーシなどのユーラシア諸国が準加盟(オブザーバー、対話
伴侶、申請中含む)になっており、ユーラシアを代表する国際安全
保障機関に成長した。上海機構は、ユーラシアの非米側を代表
する国際機関でもある。サウジやトルコ、印パなど、米国とつなが
っている諸国も参加しているが、それらの国々は非米的な色彩も
持っており、上海機構への参加は非米側との協調を強化する策と
して行われている。近年、中東での米国覇権低下に合わせて非米
的な色彩を強めているイスラエルも上海機構への加盟を希
望している。
https://tanakanews.com/220805mideast.php
非米化で再調整が続く中東
https://tanakanews.com/150706brics.php
多極側に寝返るサウジやインド
米国側はユーラシアで上海機構に対峙する国際組織を持って
おらず、米国とユーラシア各国との2国間関係だけが頼りだが、
昨夏の米軍アフガニスタン撤退に象徴されるように、米国の
影響力は低下し続けている。今後たとえ中露がユーラシアの
運営に失敗したとしても、その空白を埋める形で米国側の影響
力がユーラシアで拡大することはない。そもそも中露は、
冷戦後の米国が1990年代末にユーラシア進出を放棄した後の
空白を埋めただけだ。米国はその後ずっとユーラシアに戻ろう
としていない。アフガニスタン占領も、米国に目的意識が感じ
られず、中露に脅威を感じさせて結束させてユーラシア覇権を
取らせるための隠れ多極主義の策でしかなかった。
https://tanakanews.com/090807china.htm
多極化の進展と中国
https://tanakanews.com/090210afghan.htm
米露逆転のアフガニスタン
ユーラシアの覇権は、すでに不可逆的に中露が持っている。
中央アジアの石油ガス利権の多くは中国のものになった。
昨年の米軍アフガン撤退と、今年からのウクライナ戦争は、
中露のユーラシア覇権を強化する働きをしている。バイデン
の米国は選挙前のインフレ対策(石油ガス相場引き下げ策)
として、石油ガス産出国であるイランと核協定を結び直そう
としているが、イランはウクライナ開戦後、ロシアがユーラ
シアの貿易システムの非米化を進めてくれたおかげで、
米国側からの経済制裁に関係なく、中露などユーラシアの非
米諸国と貿易を拡大できるようになった。イランにとって
米国との核協定の結び直しの重要性が下がった時に、米国が
イランと核協定を結び直したがっている。米国の愚策(隠れ
多極化策)が、イランを優勢にしている。イランは、核協定
がどうなるかに関係なく、ユーラシアの非米化に貢献していく。
https://tanakanews.com/220820iran.php
イラン核協定で多極化
https://tanakanews.com/220718TAPI.php
インドへのパイプラインでアフガンを安定化するプーチン
イランとロシア、それから露イランと親しいカタールは世界の
3大ガス産出国だ。3か国で世界の天然ガス埋蔵量の6割を占
める。3か国は、ガス供給のカルテルを作って米国側へのガス
輸出価格をつり上げたい。これまでは消費者である米国側
の覇権が強くて不可能だった露イラン結束によるガス価格つ
り上げ策が、ウクライナ戦争による転換でやれるようになった。
この手の転換・非米側台頭があち
こちで起きている。
https://www.zerohedge.com/energy/are-iran-and-russia
moving-create-global-natural-gas-cartel
Are Iran And Russia Moving To Create A Global Natural Gas Cartel?
米国は、ペロシ下院議長が訪台するなど、中国との敵対関係を
強めている。米国が中国敵視を強めるほど、中国共産党の上層
部では、ロシアやイランと組んでユーラシアを非米化して米国
覇権に対抗しようとする習近平の力が強まり、米国と協調しよう
とする胡錦涛までのリベラル系勢力が弱まる。ペロシ訪台など
米国の中国敵視策は、中国を非米化し、中露結束を強化し、
プーチンを助けてしまっている。ペロシ訪台も、隠れ多極化策
である。
https://tanakanews.com/220811china.php
中国に非米化を加速させ米覇権衰退を早めたペロシ訪台
https://www.rt.com/news/560142-crisis-taiwan-pelosi-us/
Real Taiwan crisis is only starting - WaPo
ユーラシアは不可逆的に中露のものになっている。ユーラシア
大陸を外側から支配してきた米国(米英)が退潮し、大陸を内側
から支配する中露が台頭している。これは、地政学の逆転である。
地政学は英国が作った学問の体裁をとった戦略であり、英米が
ユーラシアを外側から包囲・支配することで全世界の覇権を持ち
続けられるという話だ。
https://tanakanews.com/171101china.htm
世界資本家とコラボする習近平の中国
地政学は、ユーラシアにおける英米の優勢を前提としている。
今のように、大陸の外側の英米よりも内側の中露が優勢になった
場合に世界の覇権や米英がどうなるかという展開は歴史上初め
ての経験だ。19世紀末に資本家(多極主義者)がシベリア鉄道
を開通し、ロシアがユーラシア内側の統一された初の勢力になっ
て以来、内側と外側が対立する事態になったが、これまでは常
に外側が強かった。中国はなかなか台頭しなかったし、中露
(中ソ)の結束も強まらなかった。だが2000年以来の四半世
紀で状況が大転換し、今や内側の中露が結束し、非米諸国を率
いて世界の資源類の利権を握って強くなり、外側の米国側は
衰退の一途だ。中国は米覇権を潰したい習近平が独裁する強大
な国になり、欧米はどんどんショボくなっている。この逆転は
今後ずっと続く。地政学の理論は加筆が必要だが、地政学を
語る(騙る)権威筋は米国側のプロパガンダの傀儡であり、
地政学の逆転自体が「起きてない」ことになっている。笑える。
https://theconservativetreehouse.com/blog/2022/08/18/
something-is-looming-geopolitically-and-we-better-start-taking-it-seriously/
Something Is Looming Geopolitically, And We Better Start Taking It Seriously
日本のマスコミでは、一帯一路が失敗したことになっているし、
ユーラシアの非米化もプーチンの奇抜な失策とみなされている。
日本のマスコミ権威筋やその傘下にあるネット言論は、この分
野でも他の分野でも、敵性勢力の失敗を妄想して嘲笑するだけ
の幼稚な思考に終始している。日本の今後の経済発展を考え
るなら、日本もユーラシアの開発に参加する必要がある。だが、
それにはユーラシアを席巻する中露と和解し、米国からの非難
や妨害を乗り越えて動き続けねばならない。中露との和解は
可能だが、米国からの非難妨害を乗り越えるのは、現実無視
の対米従属屋しかいないマスコミ権威筋(とその傀儡市民)
を抱える今の日本にとって難しい。日本は、ユーラシアに手
を出せない。「ユーラシア開発はどうせ失敗するのだから不
参加で良い」という幼稚な妄想を軽信し続け、貧しくなって
いく運命にある。
https://www.goldmoney.com/research/geopolitics-the-
world-is-splitting-into-two
Geopolitics: The World Is Splitting In Two
https://tanakanews.com/220522china.htm
中国と戦争しますか?
▼中露が日韓駐留米軍を撤退させる
ユーラシアを席巻した中露は今後、ユーラシアを外側から包囲
してきた米軍の基地を撤去しようとするだろう。とくに韓国と
日本の駐留米軍は、中露の両方に近く、冷戦中から根本的な動
きがほとんどなく維持されてきた。前回の有料記事に書いたよ
うに、在韓米軍の撤退は、これから中露が朝鮮半島の和平仲裁
を主導していく時に、和平の最終目標になっていく。今後の
半島和平を成功させるための最重要な点は、和平や在韓米軍
撤退が実現しても、北朝鮮の金家の独裁体制が内部崩壊しない
という自信を、金家など北の上層部に持たせることだ。北朝鮮
はこれまで、南北の戦争状態や在韓米軍の脅威を使って国内を
結束させ、金家の独裁を維持してきた。うかつに和平を達成
すると、その後で事態が安定した時に、北の国内で金家の独裁
体制を支持する洗脳が解け、政権や国家が崩壊しかねない。
北の上層部がそれを懸念している限り、北は何やかんや理由を
つけて和平を進め
たがらない。
https://tanakanews.com/220827korea.php
中露主導の朝鮮半島和平への道筋をつけるロシア
https://www.dw.com/en/why-is-north-korea-aiming-to-
strengthen-ties-with-russia/a-62888392
Why is North Korea aiming to strengthen ties with Russia?
和平が達成されても北の政権が維持されるには、北の政権の
正統性を、軍事(米韓に負けないこと)から経済(北の人々
の生活が良くなること)に転換する必要がある。北は、金正日
の時にそれをやりかけた。金正日は、経済を自由化した中国に
見習って、張成沢ら経済担当の側近を重用し、軍人を遠ざけた。
だが、2011年に金正日が死んで金正恩が後継した後、軍部が
金正恩をたらし込んで権力の近くに戻り、2013年に張成沢ら
経済担当者たちを処刑・降格して外し、北は再び軍事最優先
に戻った。これから中露が半島和平を進めるなら、その前に、
金正恩を説得して北を経済優先の国策に戻さねばならない。
ウクライナ開戦後、北に格安(ほぼ無償)で石油ガス食糧類
を供給し始めたロシアは、兄貴分である中国と連携し、金正恩
の翻意をうながしていくのでないか。
https://tanakanews.com/131218korea.htm
北朝鮮・張成沢の処刑をめぐる考察
https://tanakanews.com/140509korea.htm
御しがたい北朝鮮
北朝鮮が経済発展し始め、和平が進んで軍事的脅威が減っても
北が政権維持できるようになると、南北和解が実現し、韓国が
米国に要請して在韓米軍が撤退していく。その前に(もしくは
同時期に)、米国が覇権放棄屋のトランプの共和党政権になり、
米国の方から在韓米軍を撤退していく可能性もある。在韓米軍
がいなくなったら、次は在日米軍だ。
https://tanakanews.com/220808abe.htm
安倍元首相殺害の深層 その2
在日米軍撤退の条件となるのは、台湾が中国の傘下に入って台中
の和解が実現することだろう。朝鮮半島が和解しても、台湾問題
が残る限り、在日米軍は駐留し続ける。中国(中露)が強くなり、
米国が弱くなる傾向なので、日本自身が米国に頼って中露と敵対
し続けるシナリオは消えていく。台湾が独立して中国がそれを容
認するシナリオもなくなる。武力による台湾併合は、アジアの地域
覇権国になる中国の印象を悪くする。アジア諸国から尊敬されたい
中国は、台湾を武力併合しない。米国の覇権崩壊など政治環境の
変化によって、台湾が中国と交渉する気になるしかない。何らか
の道筋で台湾問題が解決すると、米中や日中の対立も低下し、
在日米軍が撤退する。米国は金融面と社会面から崩壊しかけて
いるがこれが進むと米英が中露を敵視する力も失われ、日本や
台湾は中国を敵視できなくなり、地政学も丸ごと過去の遺物となる。
https://tanakanews.com/220819tansyn.php
日本の隠然非米化
この記事はウェブサイトにも載せました。
https://tanakanews.com/220829eurasia.htm
上記は「田中宇氏」ブログより
日韓の今後の将来が良く分かります。以上
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