★アフリカのクーデター頻発の意味
★アフリカのクーデター頻発の意味
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西アフリカの諸国でクーデターが頻発している。この2年間に
ブルキナファソとマリで3回ずつ、国軍の将校によるクーデター
で政権が転覆されたほか、ギニアやモーリタニアなどでも起きて
いる。特筆すべきは、これらの合計9回のクーデターのすべてが、
米軍の訓練を受けたことがある軍人によって起こされたことだ。
米軍は、アフリカなど世界中の親米的な途上諸国の軍人に対し、
テロ対策や反乱抑止、治安維持などの軍事機能を訓練してきた。
建前上、その目的は途上諸国の民主的な政治安定や経済発展に
貢献するためだ。だが実際は、米軍の訓練に参加した西アフリカ
諸国の軍の将校たちが、米軍から教わった軍事技能を活用して、
自国の現職の政権を倒すクーデターを挙行し、非民主的な軍事
政権を作っている。ブルキナファソやマリでは頻繁に(今年2
回ずつ)クーデターが起こり、政治の不安定と経済の破綻を招
いている。米軍による訓練は、目的と正反対の効果を西アフリ
カ諸国にもたらしている。
https://original.antiwar.com/Ted_Galen_Carpenter/2022/04/18/the
-us-military-is-training-third-world-coup-leaders-again/
The US Military Is Training Third World Coup Leaders Again
ブルキナファソでは9月30日、トラオレ陸軍大尉が率いる国軍の
反乱兵士たちがクーデターを起こし、今年1月にクーデターで
誕生したばかりのダミバ陸軍中佐が作った軍事政権(暫定政権)
を倒し、トラオレ大尉が新たな軍事独裁者になった。倒された
ダミバ中佐は、クーデターを起こす10年以上前から米軍の訓練
を繰り返し受けていた。ダミバが今年1月にクーデターで政権
を奪取した時には「米軍の訓練がアフリカを民主化・発展させ
るどころか逆に、独裁と混乱と貧困に陥れている」と米欧で批
判された。9月末のトラオレによるクーデター再発後、米欧マス
コミが米軍に対して「トラオレは米軍で訓練を受けたことがある
のか」と問い合わせたところ、米軍の広報担当は「わからない。
調査中。今のところ米軍との関係は確認されていない」と答えた。
米軍のアフリカ司令部は、訓練を受けた後のアフリカ諸国の将校
たちが本国で何をしているのか全く追跡しないことにしている、
とも述べている。
https://responsiblestatecraft.org/2022/10/10/pentagon-doesnt-know
-if-it-trained-burkina-faso-coup-leader/
Pentagon doesn’t know if it trained Burkina Faso coup leader
米軍は、自分たちがアフリカの軍人たちにほどこした訓練がアフリカ
の政治経済を悪化させていると批判されたくないので、責任逃れの
ため、トラオレが米軍で訓練を受けたことがあるかどうか言わず、
訓練後の将校たちの動向も追跡していない(実際には追跡しているが、
していないことにしている)とも考えられる。だがそもそも、反乱抑
制や治安維持(効率的な有事体制づくり)などの軍事技能は、軍が政
府を守るためだけでなく、軍が政府を倒して自分の独裁政権を作るた
めにも使える。武器は、悪者を倒すためでなく、自分が悪者になるた
めにも使える。訓練後の軍人たちは(途中退職後の自衛官や警察官と
同様に)要注意人物である。アフリカ(など世界中)で覇権を運営し
ている米国は、米軍で訓練を受けた各国の軍人たちが事後に本国でど
んな動きをしているか、非公式に監視し続けているはずだ。
https://www.nytimes.com/article/burkina-faso-africa-coup.html
Five African Countries. Six Coups. Why Now?
米軍は2007年に、アフリカを専門に担当するアフリカ軍(司令部)
を新設した。専門部署を新設したのに、米軍が訓練後のアフリカ
諸国の将校たちの動向を見ないまま放置しているはずがない。米軍
はむしろ、アフリカでの軍事諜報活動や隠然介入を以前より強化し
ているはずだ。
https://thecradle.co/Article/Columns/15975
Escobar: The Real US Agenda In Africa Is Hegemony
この点をさらに深く考察すると、米軍はアフリカを意図的に恒久的
な混乱の中に置いておくために、軍人たちがクーデターや内戦を起
こせるような軍事技術を供給し続けてきたのでないか、という疑い
になる。米軍がアフリカの将校たちを訓練した場所の一つに、米国
ジョージア州フォート・ベニングの訓練センターがあるが、ここは
冷戦時代、中南米諸国の将校たちに軍事訓練をほどこしてきた場所
でもある。訓練を受けた中南米の将校たちの中にはその後、自国で
左翼政権などを倒すクーデターを起こして軍事独裁者になったり、
自国内の左翼やリベラル派を拷問虐殺する政策を担当した者がたく
さんいる。米国が訓練した軍人たちによって、中南米は民主主義と
経済安定を潰され、人々は何十年も独裁と虐殺と貧困に苦しめられ
続けている。
中南米の人々の多くは、米国が意図的に中南米を潰し続けていると
思っている。この感覚は、おそらく事実に近い。米国は中南米を
偶発的にでなく、意図的に潰してきた。となれば米国は、似たよう
な策略をやっているアフリカも、意図的に潰している可能性が高い。
西アフリカでクーデターが頻発して政治経済の不安定が延々と続い
ている一因は、米軍が西アフリカ諸国の将校たちを訓練してクーデ
ターのやり方を教えているから、ということになる。
https://responsiblestatecraft.org/2022/06/29/poll-china-most-influential-
power-in-africa-as-us-influence-wanes/
Poll: China most influential power in Africa as US influence wanes
中南米やアフリカを潰して恒久的な混乱と貧困の中に置いておく
米国の戦略は、一つ前の覇権国である英国の戦略を踏襲したものだ。
英国は19世紀前半にナポレオンを倒して覇権国になる時に、
スペインが無政府状態になった混乱に乗じて中南米各地でバラバラ
の独立運動を支援し、中南米をたくさんの小国に分割して独立させる
ことに成功した(ポルトガル領だったブラジルだけは英国も手を出
せず、単独の大国になった)。その後、英国はフランスなど他の列強
を誘導して「アフリカ分割」や「中東分割」を手がけた。英国は、
これらの諸大陸を小国に分割することにより、諸大国に大型の国が
できてそれが経済発展して強国になって英国の覇権を脅かす可能性
をあらかじめ阻止した。
https://tanakanews.com/080829hegemon.htm
覇権の起源・ユダヤネットワーク
英国などの列強は、アフリカを分割する際に、各地の民族が分断
されるかたちで国境線(列強植民地間の境界線)を引き、いずれ
アフリカ諸国が独立しても、小さな国々が相互に戦争もしくは内戦
を永久に抱えるように仕向け、アフリカが永久に弱くて貧しくて欧
米の言いなりになるようにした。英国は、同様の手口で中国も分割
しようとしたが、新興の資本家たちの国だった米国が、中国の分割
を阻止した。
https://tanakanews.com/f0129china.htm
600年ぶりの中国の世界覇権
英国による世界分割は、英覇権上層部の「帝国と資本の暗闘」の
一部でもあった。産業革命によって成立した英国覇権(大英帝国)
は、英国による世界支配を恒久化しようとする「帝国」と、産業
革命(工業化)と大量消費を世界中に拡大して世界経済を発展さ
せようとする「資本」という2つの方向性の間の協業で成り立
っていた。「資本」は、大量消費してくれる安定した大きな市場
を各大陸に作りたがった。大きな新興国が安価な労働力で大量生
産し、その賃金で貧困層が所得を増やして中産階級になって消費
が拡大し、経済大国になる。その過程で資本家が儲ける。資本の
側は、中南米アフリカ中東インド中国など各大陸に経済大国が
新興してくることを望み、各地の民族主義を奨励・扇動し、世界
中が植民地から独立する民族自決が理想なんだと当時のマスコミ
権威筋に喧伝させた。第一次大戦後の国際連盟創設時には、すべ
ての植民地が独立する方向性が定まった。
https://tanakanews.com/080228capital.htm
資本の論理と帝国の論理
だが、植民地が独立して建国した新興大国は、英国の世界覇権の
支配体制を壊そうとする。英国内の「帝国」の側は、「資本」の
側による新興大国づくりの策略(謀略)を隠然と阻止した。覇権
運営の帝国側は、資本側との政治力学上、諸大陸の植民地の独立
自体は容認したが、その前段階で他の列強を誘ってアフリカや
中東を分割するなど植民地を細切れにしておき、英国の世界支配
を凌駕・破壊しかねない大きな新興国の出現を阻止した。帝国側
は、資本側の希望をかなえてやるふりをして破壊した。世界は、
すべての植民地が独立したものの、200近い細切れの国家群になった。
https://tanakanews.com/080814hegemon.htm
覇権の起源
米軍がアフリカの将校たちにこっそりクーデターのやり方を教
えてアフリカを不安定にしているのも、19世紀から帝国側が続
けてきた、新興大陸を弱いままにしておく策略の一環なのか??。
クーデターを頻発させなくても、アフリカは十分に分裂・内紛し
ており、不安定で弱い。覇権国である米国がアフリカを放置して
も、アフリカが結束して米覇権を脅かす新興勢力になることは
ない。米軍がクーデターを頻発させ、アフリカの分裂と混乱に
拍車をかけることは、米国にとってむしろ覇権運営のコストを
引き上げる有害な行為になっている。米国はアフリカだけでなく、
中南米や中東など世界中の途上諸国で、内戦誘発や政権転覆や
経済制裁をやり続け、混乱や弱体化を世界に強要している。
米国は世界を混乱させ、自分たちの覇権運営のコストを引き上
げる愚策をやっている。2001年の911事件後、その傾向が強ま
た。なぜこんなことになっているのか。
https://news.antiwar.com/2022/08/09/us-warns-africa-against-buying-
anything-from-russia-besides-grain-and-fertilizer/
US Threatens African Nations With Sanctions If They Buy Russian Products Other Than Grain
一つ考えられるのは、これが「帝国」の側でなく「資本」の側の
謀略でないかということだ。以前から書いていることだが、
911後に米覇権運営の主力勢力となったネオコンやタカ派は、あち
こちの途上諸国や新興諸国に人権侵害やテロ支援の濡れ衣をかけて
経済制裁や政権転覆、内戦誘発の試みを過激に稚拙にやり続
け、米国覇権を崩壊させることを意図的にやっている。ネオコンは
CFR(ロックフェラー系の覇権戦略の検討組織)のメンバーが多く、
資本側の勢力だ。彼らは、途上諸国を弱体化して米覇権を保持する
帝国側の勢力のふりをして、その策を過激に稚拙にやり続けて逆に
米覇権を自滅させ、中国ロシアなど新興諸国が団結して米覇権に替
わる多極型覇権体制を構築することを後押しする資本側の勢力
(隠れ多極主義者)である。ネオコンは民主党と共和党を行ったり
来たりしている。今のバイデン政権も、人材的にでなく政策的に
ネオコンを継承している。
https://www.gatestoneinstitute.org/18417/china-taking-over-africa
Africa Is Becoming China's "Second Continent" As US Lags Behind
https://tanakanews.com/091004hegemony.php
多極化の本質を考える
米国はクーデター誘発などでアフリカを不安定化し続けているが、
ロシアや中国は逆に、アフリカを安定させようとしている。中国
はアフリカ諸国に資金を貸し、交通インフラ整備や資源開発を手
がけている。米国側のマスコミ権威筋は、中国がアフリカを借金
漬けにしていると非難しており、建設したがうまく機能してい
ない案件もあるが、全体として、中国はアフリカを発展させている。
中国より米欧の銀行の方がアフリカへの融資総額が多く、借金漬
けにしている。近年はロシアと中国が協力してアフリカの発展を
助けている。これまでの100年間、米英がアフリカを混乱と貧困
の中に置き続けてきたのと対照的だ。アフリカ諸国は、アフリカ
連合を作って国際紛争や内戦など政治経済の問題を解決しようと
しているが、そこでも中露がアフリカに協力している。米国
(や英欧)がアフリカを混乱・不安定化する策をやるほど、
アフリカ諸国は「米欧より中露の方がましだ」と考え、中露に
頼るようになり、米国から中露への覇権移転を望むようになる。
https://finance.yahoo.com/news/china-not-blame-african-debt-093000144.html
China 'not to blame' for African debt crisis, it's the West: study
アフリカだけでなく、中東や中南米の諸国も、同様に、米欧に
見切りをつけて中露に頼るようになり、米国から中露への覇権
移転を望むようになっている。パレスチナ自治政府のアッバース
議長は最近、中東和平の仲裁者として米国よりロシアの方が望ま
しいと公式に発言し、米政府を激怒させている。米国がパレスチ
ナに自治政府を作らせてから30年以上経ったが、この間米国は
イスラエルの言いなりになる傾向を拡大してきた(中東和平は
ロシアがやっても難しいが)。米国は、イラクとアフガニスタン
に侵攻して合計250万人を殺したうえ混乱を放置し、
シリアを内戦にして50万人を殺した。いずれの国も、米国が
退いた後、ロシアやイラン、中国によって安定化がはかられて
いる。サウジも米国側から非米側に転向した。
https://www.rt.com/news/564758-washington-furious-palestine-russia/
US ‘furious’ over Palestinian leader’s comments to Putin
https://original.antiwar.com/Danny_Sjursen/2022/02/09/i-know-you-
are-but-what-am-i-russias-ready-response-to-us-africa-alarmism/
‘I Know You Are But What Am I’: Russia’s Ready Response to US Africa-Alarmism
これらの全体から考えて、米国の覇権運営の失敗は意図的なもの
であり、米軍が西アフリカでクーデターを繰り返し誘発している
ことも、アフリカ諸国が米国に見切りをつけて中露に頼るように
誘導する隠れ多極主義の策略でないかと思われる。覇権運営は失敗
するとコスト高なので、とくに中国は従来、米国覇権(の一部)を
自国が代替することに消極的だったが、アフリカ中南米や中東など
の諸国から、ぜひ覇権をとってほしいと頼まれ続けているので、
もはや「いやです」と言いにくい。習近平は先日の党大会で、米国
の覇権を中国がとっていく方向を宣言した。米軍が「アフリカ諸国
の軍幹部の動向なんて見ていません」とうそぶいている間に、静か
に多極化が進んでいる。
https://www.zerohedge.com/markets/groundbreaking-speech-xi-vows-
guide-china-incomparable-glory-offers-china-alternative-us
In Groundbreaking Speech, Xi Vows To Guide China To "Incomparable Glory", An Alternative To The US
この記事はウェブサイトにも載せました。
https://tanakanews.com/221019africa.htm
以上は「田中宇氏ブログ」より
中露VS米国のアフリカ勢力争いです。平和的にやってもらいたいものです。以上
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