
グロアシス・ウォーターボックス(「Wikipedia」より/Ingeev)
空気だけで走る車、普及本格化で日本自動車メーカーの脅威に…空気から水生成も普及
http://biz-journal.jp/2017/03/post_18480.html
2017.03.28 文=浜田和幸/国際政治経済学者 Business Journal
数年前のことだが、資源エネルギー外交の一環として中東諸国を訪問した。なかでもサウジアラビアでの体験は強烈であった。同国の外務省で日本人初の講演を行った後、砂漠の民ベドウィンの族長のもとを訪ねた時のことだ。
それまで何カ月も雨が降らず、ラクダの乳で喉を潤していたとの話を聞いていると、突然、あたりが薄暗くなり、無数のトンボが出現。その直後、雨が降りだしたのである。ベドウィンたちからは「恵みの雨をもたらしてくれた日本人」ということで、大歓迎されることになった。乾燥地での生活において「水一滴は血一滴より貴重」という。あらためて水の重要性を噛みしめたものである。
いうまでもなく、世界的な水不足が深刻な問題をもたらし始めている。水源をめぐる紛争や対立も激化しつつある。2025年までに、世界人口の3分の2は水不足の生活を余儀なくされるようになるという。シリアで続く紛争も、元をたどれば水問題が引き金であった。■「ウォーターボックス」
しかし、「ピンチはチャンス」との発想でこの水不足を新たなビジネスと受け止め、技術の力で乗り越えようとする動きも各地で見られるようになってきた。国連や世界銀行でも水問題の深刻さを訴えると同時に対策に向けての資金提供も進めている。もちろん、民間サイドにおける研究開発や商品化の動きも活発化している。
たとえば、すでに08年の時点で、オランダで開かれた科学技術サミットにおいてオランダ人の発明家ピーター・ホッフ氏は「ウォーターボックス」と銘打った新商品を展示し、栄えあるベーター・ドラゴン賞を獲得している。欧州を代表する電機機器メーカーであるフィリップスCEO(最高経営責任者)のジェラルド・クライスターリー氏から「最も将来が期待される革命的な発明」と認定する賞状と賞金を受け取ったものだ。
その後、この新商品は「グロアシス」という名称で知られるようになった。このアクアプロ社製商品は砂漠地帯において木を育てる上で欠かせない技術になるとの期待が高まっている。すでにサハラ砂漠での実験を通じて、その性能が立証されつつあるからだ。砂地とか岩場という劣悪な環境のもとでも、この装置を使えば大気中から必要な水分を吸収し貯蔵することで、そのボックスに植えられた木が大きく育つようになる。
ウォーターボックス自体はプラスチック製の長方形の箱で、真中に穴が開けられている。その穴に木を植えるのだが、箱の中には土が詰められている。この発明品の特徴は夜間、水蒸気を吸収し箱の中にためておくことができること。もちろん、雨が降れば、その水をためておき、必要な水分を埋め込まれた木に与えることができる。しかも、強い太陽光線や風、あるいは雑草、害虫などから樹木の根を完全に保護してくれる。1年間そうしたウォーターボックスの中で育てられた苗木は、その後ウォーターボックスを取り除かれた後も自力で逞しく成長できるようになる。
サハラ砂漠での実験では、2つのグループに分かれて、この技術の有効性が試された。ひとつのグループはこのウォーターボックスを利用し、もうひとつのグループは自然のままに放置され、毎日人が水を与えるという条件に置かれた。その結果、3カ月ほど経った時点で2つのグループの成育状況を比べたところ、ウォーターボックスに植えられた木は90%ほどが順調に育ち、緑の葉を増やしていた。極めて強い太陽の下に置かれていたにもかかわらず、すくすくと育っていたのである。
もうひとつのグループは毎日水を与えたにもかかわらず、残念ながら90%以上が枯れ果ててしまった。発明者のホッフ氏に言わせると「このウォーターボックスを使えば、そして植えるべき樹木の種類を選べば、地球上の砂漠を緑地に変え農地に生まれ変わらせることも可能になるだろう」とのこと。中東やアフリカ、インドなど厳しい自然環境の土地にはこのウォーターボックスが強い味方になりそうだ。
実際、12年にはスペイン、オマーン、エチオピアをはじめ南米チリなどでも効果が確認されている。日本では鳥取砂丘という環境を活かし、鳥取大学の乾燥地研究センターが同様の実証研究で成果を上げ、海外への技術移転にも積極的に取り組んでいる最中である。アフリカや中近東の砂漠地帯を中心に日本からの技術を生かした砂漠の緑化と農業生産が試みられている。
しかも強気のホッフ氏は「このウォーターボックスを使い、20億ヘクタールの森林を育てることができれば、現在人類が放出している二酸化炭素(CO2)を全て吸収することも可能になる」とまで豪語する。地球温暖化対策にも役立つというわけだ。「人類が過去2000年の間に伐採してしまった森林を自然の力を利用して取り戻すことが夢だ」と熱く語る。
■家庭用の造水機
実は、似たような技術はカナダの発明家もすでに商品化している。カナダの「エレメント・フォー」という会社は家庭用の造水機を開発し、すでに市場に投入済みである。この造水機の特色はやはり空気中の水蒸気を吸収し浄化した後に、飲み水として利用することを可能にしたものである。
「ウォーターミル」と呼ばれる造水機で、使用する電力は極めて少ない。一般家庭の壁に装着し、空気中からフィルターを通して不純物を取り除いた後に水を製造する。最近流行しているインフルエンザなどの病原菌も、マイクロ波を照射することで殺菌除去する機能も付いているため、単に水を空気から絞り出すだけではなく、大気中に含まれる雑菌や細菌も除去してくれるというので人気が出ている。
■空気から飲料水をつくる機械
こうした空気から水をつくる機械の開発が盛んになってきた背景には、何があるのだろうか。実に驚くべき事実であるが、「大気中には大量の水分が含まれており、その量たるや地球上のすべての河川に流れる水の量より8倍以上も多い」ということ。そのため、湿度が30%以下でも、このウォーターミルは十分水分を吸収し、飲み水に変えることができるという。全自動の湿度感知器がついているため、夜明けの最も湿度の高い時間に効率的に水分を吸収できるようになっている。
すでにアメリカ、イギリス、イタリア、オーストラリアでは販売が始まっている。日本でもすでに特許申請が認められているという。そこで、気になるお値段であるが、1基1200ドル。約13万円。アメリカでは人気が高いというが、果たしてどこまで日本人の味覚に合った水を提供してくれるものか。日本ではペットボトルが普及しており、こうした造水機の需要はまだそれほど大きくはなさそうだ。
とはいえ、アメリカのサンフランシスコ市ではペットボトルの使用を職員に対して禁止するという条例を可決したほどだ。水不足に対する対策のひとつであるが、今後、日本にも波及しないとは限らないだろう。
そうした傾向を踏まえ、カナダのウォーターミルに負けてはならじと、アメリカのエックス・ジエックス社も空気から飲料水をつくる機械を完成させ、市場に売り出すことになった。1ガロンの水をつくるのに10セントの電気代がかかるが、この機械も空気中の汚れやほこりをフィルターで除去し、浄化処置をした後に飲み水に変えることができるという。
「あらゆる種類の空気から水を作り出し純粋で安全な水を生み出す」というのがうたい文句になっている。このエックス・ジエックスの販売戦略は、一般の水道水が生物化学テロに襲われるといった非常事態を想定したものにほかならない。水道水が安全とはいえ、その水源地に有害物質が投入されたり、地震や災害で水道管が破裂するようなケースを想定し、空気中から必要な飲料水を確保しようという危機管理の発想である。こうした危機管理の観点から「空気中の水蒸気を活用する水製造機」は、将来的には必要な生命維持装置として社会的な認知を受けることになるかもしれない。
一方、アメリカやカナダに対抗するかのように、ドイツの研究機関においても空気中の水蒸気を利用した造水機の実用化が進みつつある。シュツットガルトにある「IGB」と呼ばれるバイオテクノロジーの研究所では、「ラゴス・イノベーション」と呼ばれる民間企業と提携し、自動的に空気中から飲料水を生み出すメカニズムを開発した。
砂漠地帯など乾燥地においても空気中から飲料水を確保することができるため、その実用化が期待されている。湖や川、あるいは地下水や水源地がまったくない場所であっても、この機械は水を生み出すことができる。IGBではすでにイスラエルのネゲブ砂漠で実験を繰り返している。この砂漠地帯では大気中の湿度が年平均して64%であるため、1立方メートルの空間から11.5ミリリットルの水を安定的に確保することができるという。
■新しい技術革新
「必要は発明の母」というが、今や世界各国で水不足を克服するための新たな発明の競争が始まっている。インドシナ半島やサブサハラなどアフリカ大陸においても水資源をめぐる争いは激化の一途をたどっている。海水を淡水化する、あるいは汚染された水を浄化し再利用するといったこれまでの造水技術とはまったく発想が異なるアプローチが注目を集めている。地球上のあらゆる場所に公平かつ潤沢に存在する空気。この無限の資源から水を造りだすという開発レースが始まったのである。水の豊かな日本においては、これまで思いつかなかったアイディアといえるかもしれない。
しかし、考えようによっては、これほど確実な水源地の確保につながる技術もないだろう。日本は海水の淡水化を可能にする膜技術では世界をリードしているものの、既存の技術の上に胡坐をかいていれば、こうした新しい技術革新の波に乗り遅れることにもなりかねない。
イザヤ・ベンダサン氏が「日本人は水と安全はタダで手に入ると思い込んでいる」と50年ほど前に指摘していたが、水をめぐる争奪戦が過熱し始めた今日、我々は水を確保するためにはあらゆる可能性を探り続けねばなるまい。水資源獲得レースに終わりはないのである。水に恵まれている日本だが、地球温暖化の影響は免れない。
これまでの常識にとらわれない瑞々しい発想で、新たな技術開発に取り組む必要がありそうだ。
たとえば、アメリカのエネルギー省では「太陽光を使って水を酸化させ可燃性化学物質を生み出す研究」にも資金提供し、着実な成果を上げている。17年3月の時点で、カリフォルニア工科大学では光電解物質の製造に道筋をつけたと報道された。要は、「水を新たなエネルギー源に転換する」というわけだ。日本も負けてはいられない。
■空気で走る自動車
それとは別に、空気で走る自動車(エアーカー)の登場には、世界が驚かされた。この空気自動車を開発したのは、フランスの自動車メーカー、ルノーにおいてF1レース用のエンジンを研究してきたガイ・ネグロ博士。同博士はルノーを退社した後、私財を投じて、究極のクリーンカーを設計することに情熱を傾けた。15年の試行錯誤を経て、ようやく市場に出せるところまで漕ぎ着けたのである。
5000ドル強という低価格とゼロエミッション(排出ガスゼロ)が売りだ。このところ自動車業界では自動走行車が話題をさらっているようだが、究極のエコカーとしての将来性を秘めたエアーカーは環境保全の観点からいえば、人類社会にとってまたとない財産になるに違いない。
その宣伝もかねて、MDIは08年3月、ニューヨークで開催された自動車ショーに最新型のエアーカーを出展し、多くの来場者の関心を集めた。地球温暖化という深刻さを増す環境問題に対する切り札になる可能性を秘めたエアーカー。冷却圧縮空気を主動力とするため、ラジエーターもウォーターポンプも必要ない。米「タイム」誌が選んだ「世界を変える最新テクノ」にもランクインした。
この技術のお陰で、エンジン全体の8割が超軽量のアルミニウムでできるようになった。従来型のガソリンエンジンと比べれば、その重さは約半分。必然的にボンネットや車内のデザインが極めて柔軟に設計できる。燃料となる圧縮空気を保存するタンクや部品を結ぶカーボンファイバー(炭素繊維)はすべてフランスの航空機メーカー、エアバスが供給している。
いい換えれば、フランスの自動車と航空機メーカーが手を結び、そこにインドの自動車メーカーと投資ファンドが資金を出すという新たな国際的アライアンスが誕生したわけだ。本格的な生産は世界の需要を見極めながらインドの工場で始まる。日本への導入も期待されているが、現時点では日本国内の法律が阻害要因として邪魔しているようだ。
現行の道路交通法によれば、国内の道路を走行できる車種に空気自動車は認められていない。さらにいえば、既存の自動車メーカーからの反対がより大きな障壁となっていると思われる。日本の自動車メーカーにとっては強敵の登場となるからだ。
しかし、欧米では徐々に普及が始まっており、タクシーやバスへの導入も始まっている。アメリカの西海岸では環境意識が高いせいか、このエアーカーの所有者が増えているという。筆者はフランスで試乗してきたが、運転感覚も乗り心地もすこぶる快適であった。日本の市場に究極のエコカーが参入できるのも時間の問題かもしれない。
(文=浜田和幸/国際政治経済学者)
<転載終了>
雑誌Nature Physicsに掲載された報告によると、シュタインハウアー氏はルビジウム原子からなるレーザーを使用した。同氏は、絶対零度近くまで冷却した媒質を介してレーザーを照射した。原子の動きは音速より早かったため、音がこのストリームを介して入り込むのは困難だったという。
シュタインハウアー氏によると、これは音が部分的に「ブラックホール」から押し出されていることを物語っている。
ホーキング博士は1974年、ブラックホールが宇宙で粒子を放射していると提唱した。これは量子力学における光子のような「仮想粒子」のこと。
宇宙の関連ニュースはこちらから。
[地震予知]:「地震の長期予測」と「地震の短期予測」とは質的にまったく異なる!
「地震予知はできる!特に短期予知なら」:上田誠也博士の講演より
無念の上田誠也博士の「地震総合フロンティア計画」:もしこれが採択されておれば、多くの人命が。。。
これらのことから電磁気的地震予知は案外うまくいくかもしれないぞと張り切って、国際的な外部評価委員会に評価を受けたのですが、時すでに遅く、その前に「短期予知は不可能」というお国の基本方針が決定しており、我々の計画は止められてしまいました。「評価がこんなに高いのにどうして継続できないのか」と担当官にきくと、「問答無用。あれは科学的評価。我々は政治的評価をする」とのことでした。これは我が国の評価システムの汚点となる事件だったと思います。さて、そうなると、全国に四十数点つくった観測点は片端からつぶされ、定職をなげうって各地からはせ参じた同士たちも失職、いまや、我々は残党になってしまいました。ラストメッセージ
「地震短期予知」は容易ではないが、不老不死の薬や永久機関をつくるのとは違い、普通の意味の科学的作業です。科学の正道を歩みさえすれば成功は射程内にあります。しかし、これには今の研究不在体制を変えるイノベーションが絶対必要です。さもなくば、それこそ当分は無理でしょう。私は地震観測をするなといっているのではありません。それも重要だが、人員と予算の1%でも「短期予知」に投じてはといっているのです。爆発的な人口増加・経済発展の期待されるアジア・中東・中南米諸地域には大地震が多いのですから、「短期地震予知」はこれらの地域の住民にも大きな安心・安全をもたらすに違いありません。それは我が国が成すべき、かつ成し得る最大級の国際貢献ではないでしょうか。時間になりました。ご清聴有難うございました。
地震予知 早川 正士氏に聞く 1/3
村井俊治氏によるMEGA地震予測 政府・地震学会はなぜ「MEGA地震予測」を無視し続けるのか?
市瀬:人間の脳の働きの中でも、脳型コンピューターがまだ得意でないジャンルもあります。思考、物語、常識、組み合わせといったものです。知的活動が全て脳型コンピューターですぐに実用化できるかというと、そう簡単ではありません。とはいえ、最近では確率と論理的な思考を組み合わせてコンピューターで処理するような取り組みも始まっています。また、ディープラーニングにより言語や語彙など人間の思考の要素となるものを学習し、その要素を組み合わせることで、思考するコンピューターが作れるのではないかという考えもあります。
脳型コンピューターについても、2014年8月に米IBMが新しいチップを作成するなど、積極的に研究に取り組んでいます。これは従来型のコンピューターの電力消費問題を解決する、1つの有望な方法だと考えているからでしょう。人間の脳そのものは、汎用的な情報処理を少ないエネルギー消費で実現しています。脳型コンピューターの技術が進展することで、より消費電力が少なく汎用的な利用へと道は開けていくと考えています。
脳型コンピューターの研究は、日本を含めて世界で取り組みが続いている。資金と人材を投入して開発が進む脳型コンピューターだが、現在どのような研究が進んでいるのか。また、実用化のめどは立っているのだろうか。
市瀬:脳型コンピューターの実現に向け、さまざまな取り組みがなされているところです。例えば、大脳新皮質の基本単位である「新皮質カラム」を全てシミュレーションするという取り組みがあります。これはスイス連邦工科大学ローザンヌ校の「BlueBrainプロジェクト」、EU(欧州連合)による「HumanBrainプロジェクト」で、スーパーコンピューターを用いてシミュレーションします。
神経細胞の微細な挙動にも目が向けられています。実際の脳のシナプスが情報を伝えるときに使う「イオンチャネル」を、チップ上で再現するという研究も進められています。脳の中で神経細胞が他の神経細胞とつながるときは、カリウムイオンやナトリウムイオンなどのイオンをやり取りして信号を伝達します。イオンを受け取った側の神経細胞は、受け取ったイオンを細胞内に取り込み、取り込んだ量がしきい値を超えると神経細胞が「発火」し、次の神経細胞へとイオンを伝達します。イオンを取り込んだり放出したりする動きをイオンチャネルと言います。スタンフォード大学では、イオンチャネルの働きを組み込んだ「Neurogrid」というチップの研究を進め、2014年5月には新しいチップの試作に成功しています。
また、脳科学の分野では、シナプスの両側にあるニューロンの発火する「スパイク」のタイミングと、人と脳における学習との間に関係があるのではないかという議論もあります。スパイクのタイミングが学習に関わっているとすれば、脳型コンピューターの構造にも関わってきます。こうした脳科学との連携でも、大きな成果が得られる可能性があります。
市瀬:ただし、今の時点で「何年後に脳型コンピューターが実用化する」と予測するのはまだ難しいのが実情です。現段階は、「脳型コンピューターがなんとかつくれそうだ」という方向性が見えてきて、世界中の研究者が頑張っているところです。いつかは実現するという目標に向かってまい進しているのです。
そうはいっても、技術の進歩は目を見張るものがあります。脳型コンピューターや人工知能に関する研究では、この10年ほどで大きな進展がありました。2007年にマウスほどの脳をスーパーコンピューターでシミュレーションしたときは、実際の脳の動きに比べて10倍の時間がかかっていましたが、2014年にはリアルタイムで画像を認識するハードウエアができているほどです。こうした技術の進展のスピードを考えると、必ずしも脳型コンピューターは夢物語の中のものではなくて、想像しているよりも速く、私たちの役に立ってくれるかもしれません。
市瀬 龍太郎
(いちせ・りゅうろう)氏
国立情報学研究所 情報学プリンシプル研究系 准教授
1995年に東京工業大学工学部情報工学科を卒業。2000年東京工業大学大学院情報理工学研究科計算工学専攻博士課程を修了し、博士(工学)を取得。2000年4月に国立情報学研究所に着任。2007年4月、国立情報学研究所 情報学プリンシプル研究系 准教授。専門は情報工学、知能情報学
世界中で競って開発を進めている脳型コンピューター。これまでも脳の仕組みを応用した「人工知能」の研究開発は続けられていて、2000年代後半からは「第3次人工知能ブーム」と呼ばれることもある。今、なぜ脳型コンピューターが注目されているのか、どのような発展が期待されているのか。人間の知的活動と人工知能の関係を研究する国立情報学研究所(NII)情報学プリンシプル研究系 准教授の市瀬龍太郎氏に尋ねた。
市瀬:脳型コンピューターや人工知能の研究は50年以上の歴史があります。今、普通に「コンピューター」と呼んでいるものの多くは、「ノイマン型コンピューター」というものです。メモリーに取り込んだプログラムをCPUで実行して情報処理を行うものです。プログラムを変えるだけでさまざまな処理ができますが、一方で、プログラムの読み込み速度が性能を左右しますし、プログラムに書きにくい処理は実行が難しいのです。脳型コンピューターは、「非ノイマン型コンピューター」の一種で、脳の仕組みを模倣して処理を行います。
人間の脳には1000億以上のニューロンがあり、おのおののニューロンは、シナプスにより1万~10万のニューロンとつながります。視覚や聴覚などの入力によってシナプスに電気信号が流れ、0.01秒程度で電気信号をやりとりします。そして約0.1秒後に、何を見たり聞いたりしたのかということを認識します。人間の脳は少ないエネルギー消費量でこの処理を実行しています。脳型コンピューターは、人間の脳の仕組みを模倣することで、従来型に比べ、ごくわずかな電力で高速な処理が可能になるのではと期待されています。
脳型コンピューターは以前から研究されていたが、この数年で特に注目を集めるようになったのには何か理由があるのだろうか。
市瀬:近年になって脳型コンピューターが注目されるようになった理由は、大きく2つ挙げられます。1つは深層学習による機械学習手法の確立です。機械的な入力作業の繰り返しから、自動的にシナプス間のつながりの重みづけが設定できます。人間の子どもがモノや文字を見て学習していくように、コンピューターが自分で学習するのです。
もう1つは脳に関する知見が蓄えられてきていることでしょう。元になる脳の仕組みや働きなどを解析する技術が進歩しています。脳の解明と、コンピューター科学の進展が合わさって、最近の脳型コンピューターの発展があると考えています。
第3次人工知能ブームで、急速に発展しているという脳型コンピューターだが、どのような利用法が考えられているのだろうか。開発が進むと、既存のコンピューターを置き換えるような存在になるのだろうか。
市瀬:脳型コンピューターは、全てのコンピューターを代替するものではないと考えています。Webサーバーやデータベースは、既存のノイマン型コンピューターが得意な領域です。一方で物体を認識するような処理を人間は瞬時にこなしますが、従来型のコンピューターではさまざまなパターンと照合するなど計算量は非常に多く、処理時間も消費電力も多く必要とします。こうした認識関連の分野から脳型コンピューターの利用が始まるだろうと考えています。
脳型コンピューター実現のアプローチは、大きく2通りに分かれる。1つは「脳シミュレーション」、もう1つは「生物にヒントを得た認知アーキテクチャー」だ。 脳シミュレーションは、実際の脳の動作を厳密にシミュレーションすることで、脳のようなシステムを作ることを目的としている。神経細胞の働きを綿密に模倣し、それらを脳と同じように階層化し、コンピューターをつくるというものだ。米国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)の「SyNAPSE」プロジェクトが代表的なもので、米IBMやスタンフォード大学、コーネル大学などが参加している。
SyNAPSEでは、神経細胞をつなぐ「シナプス」の機能を模倣しながら微細化を進めるシミュレーションを行っている。2007年にはマウス並みの5500万ニューロンを、2008年には猫並みの10億ニューロンのシミュレーター作成に成功した。これはスーパーコンピューターの上で動くシミュレーターだが、処理は実際の脳の動きに対して600倍以上もかかっていた。
このほか、スタンフォード大学でも、2014年5月に人間の脳をモデル化した小型の電子回路「Neurogrid」の開発に成功した。 そこで米I B Mは2 0 1 4年8月、SyNAPSE専用のハードウエアを開発し、発表した。「TrueNorth」と呼ぶチップで、プロセス(回路の幅)は28ナノメートル、4096個のコアを搭載し、使われているトランジスタの数は54億以上に達する。これが今までのコンピューターと違うのは、その構造である。従来のようにメモリーの情報をCPUが処理するのではなく、コア同士の電気信号のやり取りによって情報を処理する。最初に入力信号を受け取ったコアは、指定した別のコアへと信号を送る。それを繰り返すことで最終的な出力結果を得る。人間の脳が行っているニューロンの結合と同じ原理で動いているのだ。 このチップを用いることで、100万ニューロン、2億5600万シナプスを実時間でシミュレーションできる。米IBMでは2011年にも同様の原理で動くチップを開発しているが、そのときのチップはニューロンが256個、シナプスは26万2144個だった。シナプス数は約1000倍、ニューロン数は約4000倍に増加した。また、新しく開発したチップでは、400×200ピクセル、30フレーム/秒の動画から、リアルタイムに物体を認識できることが確認できた。消費電力は70ミリワットと少なく、脳の機能と省エネ性を併せ持つハードウエアが生まれた。 このように開発が進んでいる脳型コンピューターであるが、まだ課題もある。人間の脳には1000億を超えるニューロンがある。2014年時点の100万ニューロンのハードウエアとは規模に大きな開きがある。また、米IBMのTrueNorthは神経細胞のつながりの強さを、あらかじめチップに組み込んでおく必要がある。すなわち、リアルタイムで認識ができるコンピューターと、自分で学習しながら成長するコンピューターとの融合は、まだ実現できていない。 もう1つのアプローチである「生物にヒントを得た認知アーキテクチャ」は、マクロな視点から脳を見る。人間の知的活動を「知覚」「判断」「行動」などにモデル化し、それらをソフトウエアで再現する試みだ。ここでは、人間の知的活動を脳の機能ごとにモジュール化し、それを統合して動かすことで知的活動を実現するコンピューターをつくる。カーネギーメロン大学の「ACT-R」という認知アーキテクチャがその代表例だ。 いずれのアプローチの脳型コンピューターも、従来型のコンピューターとは異なり、認識など、脳が得意とする分野での実用化を目指す。脳型コンピューターの夢が実現する日が、計算機科学の進展と、脳科学の発達により、着々と近づいてきている。
SFの世界では、コンピューターが自ら人を見分け、状況を判断して働いている。こうしたコンピューターの存在は、私たちが描く夢物語だろうか。しかし現実の世界でも、電子回路で人間の脳をつくろうという「脳型コンピューター」の研究開発が進んでいる。脳型コンピューターや人工知能は古くから研究されてきたが、最近の研究の成果により脳型コンピューターの実用化へ大きなステップを踏み出したのだ。脳型コンピューターの発展の状況と、新しいコンピューターの姿を探ってみた。
コンピューターは「脳」を目指して発達してきたと言っても過言ではないだろう。コンピューターのことを“電脳”と表現するのも、脳への志向を示しているかのようだ。
すでにコンピューターは、人間の脳をはるかに超える大量の演算を、高速に処理できる性能を備えている。しかし、高速な演算処理が得意なコンピューターでも、実際の脳が行うような認識処理の方法は苦手だ。
現在のコンピューターは、メモリー上に蓄えられたプログラムやデータをCPUが読み込み順番に処理をする。そのため、メモリー上のデータをCPUに取り込むために時間がかかる、逐次処理をするため大量のデータをリアルタイムで処理するのは困難、といった問題がある。そこで、従来型のコンピューターと異なる仕組みのコンピューターが研究されている。その中でも近年注目されているのが、脳の仕組みを応用した脳型コンピューターだ。
脳型コンピューターの開発の現状を説明する前に、実際の「脳」のことを少しおさらいしよう。人間の脳は、十数cmほどの大きさがあり、その中には1000億以上の神経細胞が含まれている。
神経細胞は、本体とそこから伸びる「軸索」という長いひも状の部分、そして本体から樹の枝のように飛び出た「樹状突起」で構成される。神経同士は、軸索と樹状突起が「シナプス」というコネクターでつながる。
神経細胞が反応して電気信号が生む「発火」という状態が起こると、軸索からシナプスを通じて、隣の神経細胞の樹状突起に電気信号が伝わる。隣の神経細胞では、つながった神経細胞からの電気信号が一定量蓄積すると発火して、新しく電気信号が生まれる。この繰り返しが、考えたり認識したりという、脳の活動のもととなる。脳も電気信号で情報を処理しているならば、電子回路で脳の機能を再現できないか。これが脳型コンピューターのアプローチだ。代表的な例が、神経細胞同士が電気信号を伝え合う仕組みを電子回路で模した「ニューラルネット」である。ニューラルネットの基本的な考え方として「階層型ニューラルネット」がある。これは、人工の神経細胞を「入力層」「中間層」「出力層」という多段階層で構成する(図)。
まず、データが入力層に取り込まれる。入力層は取り込んだデータをもとに、中間層の人工の神経細胞に電気信号を送る。このとき、電気信号はそれぞれ「重みづけ」がされ中間層に届く。届いた信号の総和が一定の値を超えると、自分も発火して次の層の神経細胞に電気信号を流す。そして最後の出力層にまで届いたものが、出力結果として表示される。ニューラルネット自体の考えは古くからあったが、どうやって「適切な重みづけ」をするかが長年の課題だった。
その課題を解決したのが深層学習(ディープラーニング)という手法だ。深層学習とは、多くの入力を与えることで、コンピューターが自動的に学習するというものだ。この深層学習を用いて神経細胞を模した電子回路のニューロン間の重みづけを自動的に調整するのである。これにより、脳型コンピューターや人工知能を実現に近づけるブレークスルーになると期待され、研究開発が一段と活発になっている。
以上は「comware plus」より
今は、量子コンピューターの開発も進み速度は格段に進歩しています。予想よりずっと早く実現するでしょう。 以上
2016.12.22 17:00
やっぱり燃料代…かな?
車を購入するにあたって、何が一番気になりますか? 大きさ、デザイン、テクノロジー、そして「燃料代」。つまり、ランニングコストです。
車は買って終わりではありません。所持する上でコストが発生するわけです。税金や保険なども掛かりますが、すぐに思いつくのは燃料代ではないでしょうか。車の方が便利だけど、燃料代を考えたら電車の方が安いから結局電車を選ぶなんて意見もチラホラと…。
でも、そんなことを考える必要はもう無くなります。だって、月額2,000円の燃料補給し放題サービスがあるんですもの。
「燃料補給し放題」なんてまたまたぁ。と思われてしまうかもしれませんね。でも、現実に存在するプログラムなんです。日産ではEVカーに向けた安心と便利が詰まった「日産ゼロ・エミッションサポートプログラム2(ZESP2)」サービスを展開しています。
ZESP2には、充電サービス、ITサポート、レンタカー割引、エマージェンシーサポートの4つが含まれています。この中でも注目すべきは「充電サービス」です。
なんと、ZESP2には「使いホーダイプラン」があります。月会費2,000円(税別)で電気自動車への充電が無料になるのです。要するに定額制で充電し放題! あぁ、ついに我々は「燃料代」から開放されたのです…。
充電できるスポットも豊富です。日産販売店舗には急速充電器が約1750基。合同会社日本充電サービス(NCS)が提供する急速充電器が約3850基で、合計5600基以上で充電し放題となります。
日産リーフの航続距離はカタログ値で、30kWh駆動用バッテリー搭載車で280km、24kWh駆動用バッテリー搭載車で228kmです。これだけ走ることができれば十分ですが、遠出となれば充電も必要になるでしょう。そういった時に金額を気にせず充電できるのは、素晴らしいメリットです。
もう一度言います、ZESP2の「使いホーダイプラン」は月額2,000円で充電し放題です。
これだけでもびっくりする価格設定ですが、さらに驚きは続きます。今なら2年間の月会費が0円になる、とんでもないキャンペーンを行なっているのです。条件は以下のとおり。
2016年10月28日以降に日産自動車販売店で日産リーフをご成約いただき、ZESP2「使いホーダイプラン」にお申し込みいただいたお客様が対象となります。
この条件を満たせば、2年間は月会費の2,000円すらかかりません。快適で便利で、地球環境に優しい電気自動車を普及させたい。そんな日産の志が感じられるキャンペーンです。
ただ、お得なのはわかったけど、どこで充電できるの?
電気自動車だとこういった疑問も浮かびますよね。でも、心配ご無用です。「ITサポート」により、専用ナビゲーションで充電スポットを検索することができます。
通信を使ってスポットの満空情報も事前チェックできるため、空いてるスポットへ向かうこともできますよ。充電中にお買い物を済ませたいといったシーンでは、充電の終了をメールでお知らせする機能が役立ちます。
電気自動車に限ったことではありませんが、ここ数年で自動車のテクノロジーは目覚ましい進化を遂げました。
車は生活の手助けとなる移動手段であると共に、より高い安全性や運転サポート、快適性の向上、環境への配慮など、現代のニーズに合わせて進化しました。自動車は最先端のIT、イノベーションがふんだんに織り込まれたテクノロジーの集合体でもあるのです。
イノベーションはその燃料にも変化を与え、かつては「みらいのくるま」であった電気自動車も、一般にも普及しはじめています。そんな電気自動車の普及率を押し上げるかもしれない、日産の一手が「日産ゼロ・エミッションサポートプログラム2(ZESP2)」なのです。
月額2,000円で充電し放題。今なら2年間月会費0円。
燃料を気にせずに車を動かせる。ガソリン価格の上げ下げに一喜一憂していた時代は終わったのです。日産自動車のZESP2対応車種や加入条件などは以下リンクからどうぞ。
source: 日産リーフ、日産ゼロ・エミッションサポートプログラム2(ZESP2)
(小暮ひさのり)
以上は「gizmodo」より
現実になれば良い方法ですが何か落とし穴はないでしょうか?研究の余地はありそうです。 以上
2016.04.09 20:00
F-ZEROみたいなの、できるかな?
テスラの電気自動車が大ヒットの予兆を見せている中、注目が集まっているのが電気自動車の充電技術。多くの電気自動車はプラグインによる有線での充電を行ないますが、より気軽で将来が楽しみな「電気自動車のワイヤレス充電技術」が開発されました。
これまで電気自動車はバッテリー容量が大きいため、スマートフォンよりも無線での充電が難しいとされていました。しかしオークリッジ国立研究所のエネルギー部門が開発した20kWの無線充電技術は90%のエネルギー効率を達成できるとしているんです。
この充電技術を使えば、例えば1時間の無線充電でテスラの電気自動車を60マイル(約96km)走らせることができます。おお、これならテスラの家庭用プラグイン充電器とほぼ変わらない性能ですね! 実用性は十分にありそうです。
電気自動車の充電は給油よりも時間がかかるのが以前からの課題でした。今回のワイヤレス充電技術はものすごく高速ってわけではありませんが、さまざまな場所での充電を可能にしてくれることでしょう。さらに、自動運転車の場合も人間の手助けなしに充電ができるはずです。
動画では「バスがバス停に止まったわずかな時間に充電をする」などのシチュエーションが解説されています。この無線充電技術が発展すれば、いずれ電気自動車の充電問題は大きく改善されそうですね!
source: ORNL
Chris Mills - Gizmodo US[原文]
(塚本直樹)